第8回ふじの自然学校報告~水の気持ちになってみる~

 今年の秋は雨が多く、前回の自然学校の後も、何度か台風などでまとまった雨が降りました。雨の影響を見るため、前回に引き続き、まずはフィールド入口のU字溝などの様子を観察しました。
 コンクリートの構造物の周囲は、メンテナンスをしないと、どうしても土砂が溜まったり、オーバーフローした水で削られたりしがち。血管に人工のパイプをつなぐと不具合が生じるようなものです。懸案のU字溝の周囲では、やはり土砂が詰まったり土が削れたりした箇所が目立ちます。U字溝手前の穴に流れてきた土砂は、上流の水脈整備でヘドロがなくなったためサラサラの砂のようになってはいますが、堆積して穴の底を押し上げてしまいました。次に雨が降ると、ここがオーバーフローしてしまうおそれがあるので、土砂を掘って水の路を作りました。
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 水は蛇行しながら流速を落としていくので、それを意識し、直線的には溝を掘りません。大事なのは「水がどういう地形を描きたいのか」を考えること。水の気持ちになるのは難しく思えますが、矢野さんは「数字や文字で勉強するより、五感を通じて勉強した方がずっと早い」と、まず感覚に従ってみることを勧めます。「昔の自然科学は体の経験を分析して数値化していたんです」と矢野さんは言いますが、現在の社会では、頭で作った数字に合わせて現実を変えようとするので、あちこちに不具合が生じているのかもしれません。

 U字溝周囲のメンテナンスを終え、フィールド周囲の沢の観察です。詰まりを解消した川岸の斜面下部には浸透水の出口と思われる、くびれた箇所が見られます。土に注目すると、すっかりヘドロが消え、土がサラサラに変化しています。まるで怪しい健康食品のように絶大な効果ですが、川が本来の機能を取り戻したことで、植物も土の中の微生物も呼吸を回復したのでしょう。また、川の中には所々、深みや、蛇行している部分が出来ています。川をよく観察すると、水が勢いが付き過ぎないよう、自分で川を削って地形を形作っていることが見えてきます。
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 川沿いには所々、イノシシの痕跡も見られます。これはイノシシが餌になるミミズなどを探して土を掘り返した跡。「害獣」扱いされがちなイノシシですが、自然の中では、土を攪拌して有機ガスの発生を防いでくれる大事な役割も果たしているのです。
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 イノシシと言えば、気になるのは稲。今もイノシシは田んぼの周囲に出現してはいますが、魚網設置後は、一度もその中には侵入していません。すごいぞ三友魚網!
台風で倒れた稲は、そのまま起き上がらないものもたくさんありましたが、倒れたままでも頑張って熟してくれました。先週、有志で一部を残して刈り取り、現在はざ掛けして乾燥中です。
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 この日は早めに作業を終え、公民館へ移動。矢野さんは先日の台風で甚大な被害を被った伊豆大島で調査をされているので、その報告を聞きました。大島では1000ミリを超す記録的な大雨で火山灰が液状化し、広範囲に土石流が発生したとされています。しかし、大島の土壌は浸透性が良いはず。本来ならば、今回の雨でも吸い込む力があったのではないか、コンクリートで空気と水の流れを塞いでしまったことが、被害を拡大させたのではないかというのが、災害前から現場を見てきた矢野さんの見解です。
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 矢野さんの調べた範囲では、どうやら土石流の被害が広がっているのは、砂防ダムや林道などの構造物がある場所と一致しているようです。しかし、林道や小さな砂防堤程度であれば、山全体が崩れるほどの大きな崩壊はしておらず、また、コンクリートを張っていなかった建設中の堆積工では、土石流は発生していません。この見解通りであれば、何十億円もかけて作る土木工事が、逆に多くの人の命を奪っている可能性があります。環境だけでなく、防災の観点からも、日本の土木行政を根本的に見直す必要があるのかもしれません。
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